第42回森フォーラム概要

 

第42回森フォーラム概要

 

ベンチャー企業とSOHOの現状と課題

 

 

三菱電機株式会社 NTT事業部

中原 新太郎

 

 

〒100-8310 千代田区丸の内2−2−3

Tel 03-3218-9931

Fax 03-5252-7120

Email nakahara@s-nakahara.com

http://www.s-nakahara.com

目次

1.ベンチャービジネスとは

2.ベンチャー企業の現状と課題

3.SOHOの現状と課題

 

 

1.ベンチャービジネスとは1)

1.1.ベンチャービジネスの定義

(1)知識集約的なイノベーターとしての中小企業

(2)企業家(起業家)がリーダー

(3)脱工業化に対応

 

1.2.歴史的転換点にある日本経済

(1)キャッチアップの終わり、既存産業の成熟化

(2)生産機能の東アジアへのシフト、産業空洞化

(3)新産業創出の必要性

 

1.3.新産業の担い手

(1)新人、新企業、企業家が主役

(2)ベンチャー企業

(3)既存企業の社外ベンチャーとその限界

 

1.4.新産業の分野

(1)ハイテク産業

(2)ニューサービス(フランチャイズチェーンは該当?)

(3)問題解決型産業(福祉、環境、防災等)

 

1.5.ベンチャーと大企業の違い

(1)意志決定が速い

(2)最初から責任ある仕事ができる←→年功序列

(3)給料が低く(ストックオプション有り)教育不十分

 

2.ベンチャー企業の現状と課題

2.1.ベンチャーブームは終わったか

(1)相次ぐ有力ベンチャーの倒産

(カンキョー、コンパイル、ハイパーネット)

(2)ハイテク->FC、生活、サービス、環境

(3)地方自治体のVCの規模縮小

(4)創業者の交代:中高年男性、女性

(5)第二店頭市場の不振

 

2.2.起業のパターン2)

(1)本人はベンチャーなんかやる気がなかったのに、

解雇されたり、会社が潰れたりして路頭に迷った

挙げ句始めた「やむをえずベンチャー」

  例:クライムNCD

     自動車会社を組合間の対立で退職

    NC加工用データ作成

 

(2)2代目等で普通に営業しているつもりが、コスト

ダウンのため研究開発、新事業開拓をしている内に、

周囲がベンチャーだと勝手に定義した「そういえば

ベンチャー」

  例:東洋工機

     自転車屋からスタート、現在は名刺印刷機等

 

(3)学生時代等に理想に燃えて始めた

「青雲の志ベンチャー」

例:HIS、ソフトバンク、アスキー等

 

この中で成功するのは(1)(2)であり、(3)のケースは空想的な思い付きで始める事が多く、なかなか成功しない。

持ち込みの9割ははずれ。ベンチャー講座の生徒も最近は具体的な事業プランも作らず、ただ「Internetで何か」が半数。

 

2.3.ミドル起業の勧め(日本型の起業) 3)

(1)独立は50代前半に:社会的実績があるので信用力

(2)会社で人を動かせなければ独立しても駄目

 

別の調査では研究開発型ベンチャーでも成功するのは

研究者よりプロジェクトマネージャー経験者

 

2.4.女性起業家の台頭

(1)第一世代:ダイヤルサービス、ザ・アール、アート等

・生活産業主体

・規模を追求、全国展開

 

(2)第二世代:ユニカル、エイガアル等

・情報通信技術活用

・小数の正社員と多数の登録社員

 

(3)第三世代:ワークストリーム、クリスタルリンク等

・MBA取得

・規模拡大追わず、SOHO

・インターネット活用

 

2.5.インターネットビジネス4)

2.5.1 Cyber-marketplace
消費者向け、企業向け、電子マネー、広告

(1)インターネットでよく売れるもの

  ・実物を手にしなくても商品特性理解可能

    本、CD、コンサート等のチケット、

    旅行ツアー、投資信託等の金融商品等

  ・町の商店では買えない。地方特産品等

  ・届けなければいけないもの。ギフト商品等

 

(2)インターネットで売れないもの

  ・実物を手にしないとわからない洋服等

  ・値引きができないもの。EC:値引きは当然。

  ・送料負担が大きいもの。

 

(3)商品分類:商品を分類したカタログ

  例:日比谷花壇:購入目的別・予算別

 

 

(4)Pricing

  ・Best Price

他に安い商品を見つけたらその差額の

  35%増を支払う(Lowest Price Gurantee)

・Auction−オリックスOricoMall(中古PC)

 

(5)Mass Customization:あなただけのサ-ビス

例:Interknit:写真送付で柄入りセーター

    Amazon.com:嗜好で入力で本を推薦

 

(6)ショッピングモール

  店舗業務代行→顧客顧客代行業務

  ・商品の比較、同一商品の店舗間比較

  ・店舗・商品の格付け

 

(7)課題

  ・ビジネスルール未確立

  ・セキュリティー

  ・インフラ整備

  ・個人情報保護

  ・法制度の整備

  ・女性ユーザーの取込

  ・商品開発

  ・デリバリー

  ・販売ノウハウ整備

 

2.5.2.Cyber-workplace
通信・放送、collaboration、CALS

(Internetプロバイダー、CSデジタル等)

 

2.5.3.Cyber-livingplace
医療・教育、行政、エンタテイメント

(セコム、衛星講座等)

 

2.6.日本型の倒産

(1)カンキョー

・日本型終身雇用

大企業が雇用と系列販売店維持のため

採算度外視で参入、対抗製品開発できず。

・多角化の失敗:健康食品ショップへの参入

 

(2)コンパイル、ハイパーネット

・VCの審査能力欠如:賞を受賞した企業に殺到

・貸し渋り:銀行の一斉融資引き上げ

・貸し剥がし:再融資を条件に返済求め融資せず

・直接金融市場の未整備<->NASDAQ

・プロジェクト管理の不在、ソフトの完成遅延

・有力No.2の不在

(ブルドーザー型のトップ、経営・ブレーキ役の不在)

 

(3)その他

・閉鎖的なネットワーク

・失敗を許さない社会風土

・融資の個人保障

・地方自治体の財政難

・大企業信仰の母親、若年女性

・学校教育:疑問を持たずに丸暗記

 

ソードは失敗だったのか(倒産ではなく企業売却)?

 

2.7.産学協同は上手くいくか?:TLO等

( 1)問題は制度より人:プロデューサーの不在

( 2)金儲けを蔑視の風潮、ジェラシーとの戦い

( 3)ニーズと研究室構成の不整合

(研究室作った時はニーズなし)

( 4)インセンティブは?参加せずとも地位は安泰

( 5)大企業重視の大学、中小企業は門前払い

( 6)ポスドク1万人?淘汰が遅くなり、本人も不幸

( 7)地域振興の視点はあるか?TAMA等

( 8)公設試は役目を果たしているか?

(中小企業が欲しいのは論文よりデータベース)

( 9)ベンチャーが欲しいのはハイテクではなく問題解決

(10)若手・企業人の活用を(博士号は必須ではない)

 

 

3.SOHOの現状と課題

3.1.支援先として注目されるSOHO

 (1)背景にパラダイムの変化5)

製造業    →創造業

単一技術・製品→多角的基盤技術・システム

同業者と競争 →見えざる敵の出現

線形思考   →技術の需要表現

技術突破   →技術融合

技術革新   →制度革新

費用分担   →オプション分担方式

 

・1企業で総て抱え込むのは不可能

・企画、マーケティングは小回りの効く企業有利

・ネットワーク型企業、プロジェクト方式

 

(2)アウトソーシングの進行

・分社化の進行(営業、研修、システム開発等)

・脱系列・業務の集約

 

(3)下請け

・関係は固定から脱却

・プロジェクト毎に請け負い先変更

・代理店等の中間段階を省略

市場整備が課題(Yellow Page、料金表)

 

(4)行政の都合

・投資額が少額で済む

・雇用の受け皿や在宅介護の担い手として期待

 

(5)市場としても注目

・製品・サービス

パソコン

情報通信機器(まだFAX主流)

オフィス用品

スキルアップ

保守サービス

 

但し

・小回りの効く営業体制が必要

・顧客は技術のエキスパートでは無い

・予備機材を保有せず(迅速なサービス)

・事業展開も含めた提案力が必要

・発想が未だハード主体

 

3.2.SOHO支援

(1)インキュベート施設:TIME24、KSP、テレワークセンタ

(2)インフラ施設:SOHOタウン構想

(3)教育:経営、起業、マルチメディア

(4)融資

(5)交流会

・手法はベンチャー支援を流用

・ハード志向から脱却できず

・実態を把握しないまま横並びでスタート

・雇用の受け皿として期待

・ノウハウ欠如を業界人には不評な業者への委託で補う

 

3.3.在宅ワークとその課題

3.3.1.拡大の背景

(1)ホワイトカラー生産性向上の要求

@通勤時間の短縮

(単なるコスト削減ではない。疲労は

ボディーブローのように効いてくる)

A創造性の向上

B権限委譲促進、業務改革(副次効果)

 

(2)ワーク・ライフスタイルの多様性の追求6)

@仕事以外にも生きがいを持ちたい 76%

A自分の自由な時間を増やす 67%

B会社や仕事と離れた人との交流増 56%

C別の会社に移っても通用する知識 55%

D家族と一緒の時間を増やす 48%

1995.5月労働月報調査より(文言一部変更)

(3)アウトソーシング・脱系列の拡大

(4)情報通信ネットワークの進化と低価格化

(特に携帯:何時でも何処でも誰とでも)

(5)パソコン普及(特殊技能ではない)

ネットワーク革命の10年7)

理論則:拡張メトカーフの法則

・PCのパワーはチップ集積度の2乗に比例

・ネットワークパワーはノード数の2乗に比例

経験則:拡張ムーアの法則

・チップの集積度は18ヶ月で倍増

・ネットワークの規模は年々倍増

結論は?(3年間で1024倍)

 

今は第三の波(智業化→情報革命)

 

第二の波 第三の波

商業化 智業化

産業革命 情報革命

テクノ サイバースペース

経済的エンパワメント 知的エンパワメント

 

3.3.2.在宅ワークの利点

(1)通勤時間の短縮等による生産性向上

(2)職住接近に伴い、地域コミュニティーと

就労者との密着化、地域活性化

(3)選択可能な就労形態拡大

@育児との両立(少子化対策も含め)

(育児休暇中も情報・キャリアが断絶

しないので、育児休暇もとりやすい)

A介護との両立

B社会的弱者(障害者/高齢者雇用等)

(4)環境の負荷軽減や均衡した国土利用実現

(5)災害時危機管理等都市経営上の課題解決。

 

3.3.3.在宅ワ-ク拡大の可能性(社会情勢・環境)

(1)ISDN、Internet等通信インフラの整備

(2)情報機器の性能向上と低価格化

(3)企業組織のフラット化とアウトソーシングの拡大

(4)多様性を追求する生活意識の変革

(5)収入確保から自己実現への就労意識変化

(6)国・地方自治体等のベンチャー振興策等

が実現されつつあり、可能性拡大の方向。

 

3.3.4.在宅ワーカーの構成

米国->雇用型主体

欧州->SOHO・テレコテージ

日本->フリーランスや請負型主体

子供を抱えた女性の指向が強い。

近年Internet関連市場の拡大に伴い、

事業者性が高い若年男性の参入も拡大

 

3.3.5. 在宅ワーカーの実態8)

(NIFTY SERVE在宅ワーキングフォーラムアンケートより)

◎実施期間:1998/02/02〜1998/02/28

◎集計総数:277件

(1)性別:男性 24%、女性 76%

 

(2)在宅ワークの期間

6ヵ月未満 … 13%

6ヵ月〜 11ヵ月 … 16%

 1年 〜1年11ヵ月 … 19%

 2年 〜2年11ヵ月 … 16%

3年 〜3年11ヵ月 … 10%

4年 〜4年11ヵ月 … 3%

5年 〜6年11ヵ月 … 8%

7年 〜9年11ヵ月 … 9%

10年以上 ……………… 5%

 

(3)雇用・契約形態

@専業でフリー、請負、自営(役員含む) 46%

A主婦、学生等アルバイトで内職、請負 33%

(注)正社員のアルバイトはDに該当

B派遣やパート勤務と内職、請負 …… 9%

C会社などの非正社員(パート、契約等) 8%

Dフルタイムの正社員勤務の副業 …… 3%

E他の自営業を行いながらの副業 …… 1%

E会社などの正社員 …………………… 1%

Gその他 ………………………………… 1%

 

(4)主たる職種

@ワープロ/データベース入力 …………59%

ADTP/電算写植 ………………………22%

Bソフト関連 ………………………………17%

Cクリエイティブワーク(デザイン等) …14%

D設計・製図・CAD ……………………14%

Eライター …………………………………12%

Eテープ起こし …………………………… 8%

F翻訳 ……………………………………… 7%

Hその他 ……………………………………30%

(5)就労時間

(打合せ、営業等自宅外での時間を含む)

  週10時間未満 …… 18%  週35〜39時間 …… 15%

  週10〜19時間 …… 17%  週40〜44時間 …… 10%

  週20〜29時間 …… 13%  週45〜59時間 …… 9%

  週30〜34時間 …… 11%  週60時間以上 …… 7%

 

自宅以外での仕事の割合(営業・打合せ等)

   な  い ……… 40%  5割程度 ……… 3%

   1〜2割程度 … 43%  6〜7割程度 … 3%

   3〜4割程度 … 10%   8〜9割程度 … 2%

(6)就労場所、状態

  専用・独立した部屋で、集中して … 42%

    〃 部屋ではないが、集中して … 30%

   居間等で家事等をこなしつつ …… 28%

 

(7)税引き前年収・年商

25万円未満 … 20%   300〜 399万円 … 11%

 25〜 49万円 … 12%   400〜 599万円 … 9%

 50〜 99万円 … 10%   600〜 799万円 … 5%

  100〜 199万円 … 6%  800〜 999万円 … 1%

  200〜 299万円 … 12% 1,000万円以上 … 2%

 

(8)在宅ワークを選んだ理由

図1.在宅ワークを選んだ動機(1997年調査)

 

(9)ワークスタイルの満足度

満足している ……… 35%

ほぼ満足している … 44%

やや不満 …………… 14%

不 満 ……………… 7%

 

継続については83%が希望、16%が迷っている

 

3.3.6.在宅ワーク普及への課題

 

情報通信技術のみならず労働評価システム、

成熟社会のライフスタイル形成をはじめ、

文理両方の分野に課題がまたがる。

 

個人・企業・地域・行政の各セクターに内在

 

(1)在宅ワーカー全体に対する課題

・家族、地域社会、企業側の「在宅勤務」

という就労形態に対する理解・認知

 

・多様なワークスタイル、ライフスタイル

を許容する社会風土

 

・情報通信機器、通信のコスト低減と

操作性向上

 

・孤立感等に対するメンタル面のサポート

 

・自己管理ノウハウの開発

 

(2)雇用型在宅ワーカーに対する課題

・労災、及び人材の流動化に対応した社会

保険・年金制度の整備

 

・プロセスよりも成果を重視する評価制度

への転換

(3)下請け・フリーランス型に対する課題

・能力開発システムの整備

 

・金融システムの担保主義からの転換、

信用供与、資本市場の整備

 

・事業主・労働者という異なる側面を有する在宅

ワーカーのための市場整備(最低賃金制定等)等

 

これらの中には戦後日本の社会システムに

根差したものもあり、その解決には多方面の

専門家の参加が待たれる。

 

(在宅ワーカーの不満:NIFTY SERVE調査)

 

図2.在宅ワーカー自身が困難と感じた点(1997)

 

3.3.7.今後の展望

 少子・高齢化社会の進展に伴い、就労・産業構造、

社会システムを大きく変える可能性を有する在宅ワーク

の重要性はますます高まっていくと考えられる。

このシステムが、利点を十分に発揮しつつ、個人・企業・

地域社会にランディングしていくための条件整備を検討

するために、現在、実態把握を中心とする基礎的な調査

研究を推進中である。

 

参考文献

 

1)清成忠男:横浜市立大学講演他

 2)橋本久義: "町工場の底力"pp93,PHP研究所,1998.6.4

3)志村則彰:日本ベンチャー学会 イノベーション研究

部会シンポジウム講演,1998.12.12

4)戸田巌:武蔵大学総合研究所 マルチメディア・シス

テム研究会新春交歓会講演,1999.1.29

5)児玉 文雄:"ハイテク時代のパラダイム"pp13,

中央公論社,1991.6月

6)在宅ワーク研究会「家で働く」-在宅ワークの

現状と課題-,1996年5月

7)公文 俊平:電子情報通信学会講演他

8)NIFTY SERVE在宅ワーキングフォーラム(FWORK)

アンケート調査,1995〜1997年