1997年10月20日 上智大学電気電子産業概論テキスト ベンチャービジネスとテレワーク 三菱電機株式会社 NTT事業部 中原 新太郎 (佐藤研 1985年卒) 〒100 千代田区丸の内2−2−3 Tel 03-3218-3333 Fax 03-5252-7120 Email nakahara@s-nakahara.com http://www.s-nakahara.com 目次 1.ベンチャービジネスとは 2.企業から見たテレワークとテレワークの分類 3.日本におけるテレワークの変遷 4.社員のテレワーカー化 5.業務の発注・提携先としてのテレワーカー 6.市場としてのテレワーク 7.在宅ワークとその課題 1.ベンチャービジネスとは1) 1.1.ベンチャービジネスの定義 (1)知識集約的なイノベーターとしての中小企業 (2)企業家(起業家)がリーダー (3)脱工業化に対応 1.2.歴史的転換点にある日本経済 (1)キャッチアップの終わり、既存産業の成熟化 (2)生産機能の東アジアへのシフト、産業空洞化 (3)新産業創出の必要性 1.3.新産業の担い手 (1)新人、新企業、企業家が主役 (2)ベンチャー企業 (3)既存企業の社外ベンチャーとその限界 1.4.新産業の分野 (1)ハイテク産業 (2)ニューサービス (3)問題解決型産業(福祉、環境、防災等) 1.5.ベンチャーと大企業の違い (1)意志決定が速い (2)最初から責任ある仕事ができる←→年功序列 (3) 給料が低く(ストックオプション有り)教育不十分 2.企業から見たテレワークとテレワークの分類 2.1.企業から見たテレワーク (1)社員のテレワーカー化 (2)業務の発注・提携先 ->事業パートナー、アウトソーシング、下請け (3)市場->パソコン、情報通信機器、オフィス用品 2. 2.テレワークの形態からの分類 (1)サテライトオフィス (2)在宅勤務 (3)モバイルワーク 2. 3.テレワークの雇用・契約関係からの分類2) (1)正社員・契約社員(雇用型) (2) 下請け (3)フリーランス 3.日本におけるテレワークの変遷 80年代中 テレコミューティング 吉祥寺、志木、阿蘇 90年前後 分散型オフィス(第一次ブーム) 大宮、八ヶ岳、KSP バブル経済崩壊と同時にブ―ム下火に 90年代中 テレワーク 郵政省テレワーク構想、大企業在宅勤務 96年にモバイルオフィス、SOHOが話題に 第一次ブームとの比較 情報システム部門主導、トップダウン->各部門毎 在宅・モバイルワーク増大 情報通信網・機器の性能向上・低価格化 推進理由(地に足がついてきた) @通勤対策 生産性向上 Aオフィスコスト削減 -> オフィスコスト削減 B採用 通勤対策 しかし、企業の考える阻害要因は変わらず 適した職種無、管理困難、評価困難 リゾートオフィスの開設減少 企業内反対派層変化無(部長以上) 4.社員のテレワーカー化 常駐化(人事異動)から非常駐化へ 就労困難者雇用(身障者・介護・育児) 育児休暇中のキャリア・情報中断防止 退職者の地域社会へのソフトランディング (地域コミュニティーの核、地域との 接点としてのサテライトオフィス) 意識しないテレワークの進行 営業の情報武装・モバイルワーカー化 研修所のリゾートオフィス化 背景は 組織のフラット化 経営にスピードを要求(本社との往復不要) 通信コスト低下・パソコンの普及 人材に同質性よりも創造性を求める (1個所にまとめて作業させる必要無し) 阻害要因・課題 日本型人事評価(成果よりプロセス) 社会通念(在宅に対する無理解、東京中心) 労働組合(労働強化懸念、最近は対応変化) 5.業務の発注・提携先としてのテレワーカー 5.1.事業パートナー   背景にパラダイムの変化3) 製造業    →創造業 単一技術・製品→多角的基盤技術・システム 同業者と競争 →見えざる敵の出現 線形思考   →技術の需要表現 技術突破   →技術融合 技術革新   →制度革新 費用分担   →オプション分担方式 1企業で総て抱え込むのは不可能 企画、マーケティングは小回りの効く企業有利 ネットワーク型企業、プロジェクト方式 5.2.アウトソーシング 分社化の進行(営業、研修、システム開発等) 脱系列・業務の集約 5.3.下請け 関係は固定から脱却 プロジェクト毎に請け負い先変更 代理店等の中間段階を省略 市場整備が課題(Yellow Page、料金表) 6.市場としてのテレワーク 6.1.製品・サービス パソコン 情報通信機器(まだFAX主流) オフィス用品 スキルアップ 保守サービス 6.2.課題 小回りの効く営業体制が必要 顧客は技術のエキスパートでは無い 予備機材を保有せず(迅速なサービス) 事業展開も含めた提案力が必要 発想が未だハード主体 7.在宅ワークとその課題 7. 1.拡大の背景 (1)ホワイトカラー生産性向上の要求 @通勤時間の短縮 (単なるコスト削減ではない。疲労は ボディーブローのように効いてくる) A 創造性の向上 B権限委譲促進、業務改革(副次効果) (2)ワーク・ライフスタイルの多様性の追求 @仕事以外にも生きがいを持ちたい 76% A自分の自由な時間を増やす 67% B会社や仕事と離れた人との交流増 56% C別の会社に移っても通用する知識 55% D 家族と一緒の時間を増やす 48% 1995.5月労働月報調査より(文言一部変更) (3) アウトソーシング・脱系列の拡大 (4)情報通信ネットワークの進化と低価格化 (特に携帯:何時でも何処でも誰とでも) (5)パソコン普及(特殊技能ではない) 情報通信の世界はドッグイヤー3) (犬の1才が人間の7才に相当することから通常の 世界の7年分の変化が1年間で起こる事を指す) 例:マルチメディアの主役 80年代→データ通信 (電話線で音声、FAX、データが送れる) 1993→セガサターン等ゲーム機 1994→CD−ROM搭載パソコン 1995→インターネット 1996→イントラネット、DVD 1997→ ? ネットワーク革命の10年 理論則:拡張メトカーフの法則 ・PCのパワーはチップ集積度の2乗に比例 ・ネットワークパワーはノード数の2乗に比例 経験則:拡張ムーアの法則 ・チップの集積度は18ヶ月で倍増 ・ネットワークの規模は年々倍増 結論は?(3年間で1024倍) 今は第三の波(智業化→情報革命) 第二の波 第三の波 商業化 智業化 産業革命 情報革命 テクノ サイバースペース 経済的エンパワメント 知的エンパワメント 7.2.在宅ワークの利点 (1)通勤時間の短縮等による生産性向上 (2)職住接近に伴い、地域コミュニティーと 就労者との密着化、地域活性化 (3)選択可能な就労形態拡大 @育児との両立(少子化対策も含め) (育児休暇中も情報・キャリアが断絶 しないので、育児休暇もとりやすい) A介護との両立 B社会的弱者(障害者/高齢者雇用等) (4)環境の負荷軽減や均衡した国土利用実現 (5)災害時危機管理等都市経営上の課題解決。 7.3.在宅ワ-ク拡大の可能性(社会情勢・環境) (1)ISDN、Internet等通信インフラの整備 (2)情報機器の性能向上と低価格化 (3)企業組織のフラット化とアウトソーシングの拡大 (4)多様性を追求する生活意識の変革 (5)収入確保から自己実現への就労意識変化 (6)国・地方自治体等のベンチャー振興策等 が実現されつつあり、可能性拡大の方向。 7.4.在宅ワーカーの構成 米国->雇用型主体 欧州->SOHO・テレコテージ 日本->フリーランスや請負型主体 子供を抱えた女性の指向が強い。 近年Internet関連市場の拡大に伴い、 事業者性が高い若年男性の参入も拡大 7.5. 在宅ワーカーの実態5) (NIFTY SERVE在宅ワーキングフォーラムアンケートより) ◎実 施 期 間:1997/01/01〜1997/02/28 ◎集 計 総 数:858件 (1)性別:男性 34%、女性 66% (2)在宅ワークの期間 6ヵ月未満 … 18% 6ヵ月〜 11ヵ月 … 18%  1年 〜1年11ヵ月 … 18%  2年 〜2年11ヵ月 … 12% 3年 〜3年11ヵ月 … 11% 4年 〜4年11ヵ月 … 6% 5年 〜9年 ………… 13% 10年以上 ……………… 2% (3)雇用・契約形態 @アルバイトで内職・フリー・請負 ………44% A専業でフリー・請負・自営(含会社役員) 39% B会社などの非正社員(パート、契約社員等) 5% C会社員をしながらの副業 ……………… 5% D他の自営業を行いながらの副業 ……… 2% E会社などの正社員 ……………………… 2% Fその他 …………………………………… 2% (4)主たる職種 @ワープロ/データベース入力 …………52% Aソフト関連 ………………………………18% BDTP/電算写植 ………………………16% Cクリエイティブワーク(デザイン等) …12% Dライター …………………………………12% Eテープ起こし ……………………………11% F翻訳 ……………………………………… 7% G設計・製図・CAD …………………… 7% Hその他 ……………………………………18% (5)就労時間 (打合せ、営業等自宅外での時間を含む)   週10時間未満 …… 20%   週10〜19時間 …… 14%   週20〜29時間 …… 14%   週30〜34時間 …… 11%   週35〜39時間 …… 9%   週40〜44時間 …… 10%   週45〜59時間 …… 11%   週60時間以上 …… 11% 自宅以外での仕事の割合(営業・打合せ等)    な  い …………31%    1〜2割程度 ……52%    3〜4割程度 …… 8%    5割程度 ………… 4%    6〜7割程度 …… 3%    8〜9割程度 …… 3% (6)就労場所、状態   専用・独立した部屋で、集中して … 42%    〃 部屋ではないが、集中して … 30%   居間等で家事等をこなしつつ …… 28% (7)税引き前年収・年商 25万円未満 … 22%  25〜 49万円 … 13%  50〜 99万円 … 17%   100〜 199万円 … 11%   200〜 399万円 … 14%   400〜 599万円 … 8%   600〜 799万円 … 5%   800〜 999万円 … 1% 1,000万円以上 … 3% (8)パソコン通信(Internet含む)の活用   役立っている ……………66%   まあまあ役立っている …18%   まり役立ってない ………10%   全く役立っていない …… 5% @完成物の納品、データ送信 …… 70% A連絡、伝言、報告 ……………… 65% B各種情報の収集 ………………… 58% C軽い打ち合わせ ………………… 29% DTV会議・リモートアクセス … 2% Eその他 …………………………… 7% (9)在宅ワークを選んだ理由 @自分のペースで柔軟・弾力的に働けるため ……63% A家族(子供、高齢者)の世話や家事などのため 46% B自分がやった分だけ報われ、働きがいがある …43% C仕事を選べる、自分の専門分野の仕事ができる 37% D通勤が無駄、嫌い …………………………………33% Eパソコンの仕事が好きだから・買ったから ……26% F会社勤めが不向き、嫌い …………………………22% G多くの収入(あるいは副収入)のため …………15% H会社勤めでは能力発揮できない …………………12% Iよい勤め口が無い …………………………………11% J将来の事業展開や事務所コストの節約 …………10% K仕事の依頼、職場の人に勧められたから ……… 8% L自分の障害や病気のため ………………………… 7% M転居して通勤不可、地方で暮らすため ………… 5% (10)ワークスタイルの満足度 満足している ……… 48% ほぼ満足している … 46% やや不満 …………… 5% 不 満 ……………… 1% 継続については88%が希望、 10%が迷っている 7.6.在宅ワーク普及への課題 情報通信技術のみならず労働評価システム、 成熟社会のライフスタイル形成をはじめ、 文理両方の分野に課題がまたがる。 個人・企業・地域・行政の各セクターに内在 (1)在宅ワーカー全体に対する課題 ・家族、地域社会、企業側の「在宅勤務」 という就労形態に対する理解・認知 ・多様なワークスタイル、ライフスタイル を許容する社会風土 ・情報通信機器、通信のコスト低減と 操作性向上 ・孤立感等に対するメンタル面のサポート ・自己管理ノウハウの開発 (2) 雇用型在宅ワーカーに対する課題 ・労災、及び人材の流動化に対応した社会 保険・年金制度の整備 ・プロセスよりも成果を重視する評価制度 への転換 (3)下請け・フリーランス型に対する課題 ・能力開発システムの整備 ・金融システムの担保主義からの転換、 信用供与、資本市場の整備 ・事業主・労働者という異なる側面を有する在宅 ワーカーのための市場整備(最低賃金制定等)等 これらの中には戦後日本の社会システムに 根差したものもあり、その解決には多方面の 専門家の参加が待たれる。 (在宅ワーカーの不満:NIFTY SERVE調査) @仕事の確保 ……………………………50% A単価が安い ……………………………36% B能力、知識の不足 ……………………33% Cハードウエアのレベルアップ ………29% D納期間際の病気等への対処 …………24% E大きな仕事受注の人材確保 …………21% F仕事スペースの確保 …………………21% G営業のやり方不明、うまくいかない 16% H忙しすぎる、体力的にきつい ………13% H税務問題 ………………………………13% J取引先とのトラブル ………………… 3% その他……………………………………11% 特になし………………………………… 7% (在宅継続が困難な理由:NIFTY SERVE調査) @収入が少ない …………………………49% A仕事が確保できない …………………34% B体力的に無理、生活との両立が困難22% C将来性がない …………………………20% D一時的な仕事、勤務スタイルである 15% E一人で働くことが向いていない ……10% その他 …………………………………24% 7.7.今後の展望  少子・高齢化社会の進展に伴い、就労・ 産業構造、社会システムを大きく変える可能 性を有する在宅ワークの重要性はますます 高まっていくと考えられる。 このシステムが、利点を十分に発揮しつつ、 個人・企業・地域社会にランディングしていく ための条件整備を検討するために、現在、実態 把握を中心とする基礎的な調査研究を推進中で ある。 8.まとめ 企業から見たテレワーク (1)社員のテレワーカー化 推進目的は生産性向上が主流に 人事評価等阻害要因は変化なし 常駐化(人事異動)から非常駐化へ 退職前の地域社会へのソフトランディングも 意識しないテレワークの進行が主流に (2)業務の発注・提携先:背景にパラダイム変化 (3)市場:ハード中心からの脱却が課題 在宅ワークとその課題 フリーランスや請負型主体 子供を抱えた女性の指向が強い 課題は 雇用・契約関係により異なる 情報通信技術のみならず労働評価システム、 成熟社会のライフスタイル形成等 文理両方の分野にまたがる。 個人・企業・地域・行政の各セクターに内在 参考文献  1)清成忠男:横浜市立大学講演他 2) 在宅ワーク研究会「家で働く」-在宅ワークの現状と課題-,1996年5月 3)児玉 文雄:"ハイテク時代のパラダイム"pp13,中央公論社,1991.6月 4)公文 俊平:電子情報通信学会講演他 5)NIFTY SERVE在宅ワーキングフォーラム(FWORK)アンケート調査,1995〜1997年